相子智恵『呼応』おはなし会まとめ

相子智恵『呼応』おはなし会

5月14日に「相子智恵『呼応』おはなし会」を行った。一人ずつ十句選とコメントをいただいた。相子さんもいらしてくださり、フリートークでお話を伺うことができた。二時間ほど、『呼応』の素晴らしさについてお話ができたのはとても嬉しいことだ。

僕はレジュメも作成し、一人五分という持ち時間だったので、簡単に「リフレイン」と「音」について触れた。

最近読んだ、上田信治『成分表』(素粒社、2022年)に、

ひし餅のひし形はが思ひなる/細見綾子

という句について、

音の展開を楽しまなければ、読んだことにならない

という記述があった。この句でいう「音の展開」とは、

  • 「ひし」のリフレイン
  • 「がたはたが」回文フレーズ
  • 「餅」と「思ひ」が「も+i」で構成されている

といったものだ。

「読んだことにならない」というのは凄いなと感じ、レジュメではその観点で『呼応』でそれを見ていくこととした。

「リフレイン」と一口にいっても、

梨食ひぬ鼓膜の奥に梨の音

(「梨」という)語がそのまま繰り返されているもの、

すすきとるさらにあかるき薄とる

(「すすき」と「薄」で)表記がずらされているもの、

社旗国旗安全旗東風打ちゆけり

(「○○△」という△の部分のみが同じで)色々な△のパターンを出してくるもの、

木の匙の木目あたたか拭き終へて

(漢字が同じだが意味が異なる)見た目上の繰り返し

など、細分化できると感じた。

この細分化したものを一つ一つ見ると、『呼応』はさらに話が膨らむ魅力的な句集だと思う。今回はお時間が足りなかったが、いずれまた。

また、直感で選んだ十句選や、付箋をつけたけれど厳選の末十句選から漏れた句も、書き出してみると驚くほど韻律が優れていることが分かった。わざとらしくなく、自然と句として成立していたのだと気づく。

今後のおはなし会

芭蕉、蕪村の後、現代の句集についておはなし会ができた。

また、おはなし会の数時間後に『呼応』が第13回田中裕明賞受賞を受賞されたと知り、大変嬉しく思った。

今後もおはなし会を続けていきたいと思う。角川ソフィアなどで全句集であったり、ふらんす堂の百句シリーズであったり、何かしら全員が手に入れられるもので。

ご希望があればぜひご連絡ください。